長く苦しい中小企業診断士試験の、最後の最後に立ちはだかる最大の難関、事例Ⅳ
そして、その事例Ⅳの最初にそびえ立つ第1問目
こんにちは。中小企業診断士のまっころです。
本記事では、事例Ⅳの第1問目に焦点を当てて、その詳細を書いていきたいと思います。
事例Ⅳの第1問目とは
以下のページ「二次試験の分析とファイナルペーパー公開 事例Ⅳ」でも書いていますが、事例Ⅳの第1問目は、ほぼ確実に経営分析です。
経営分析の問題とは、
- 財務諸表(貸借対照表・損益計算書)を元に、
- 対象となる企業(D社)の「優れた点」「課題となる点」などを読み取り、
- その指標となる財務指標を示して計算し、
- その内容・課題などを指摘する
という問題です。
中小企業診断士に必要な能力ですね。
また、合格後に行われる実務補修でも、まずこの分析をすることになると思います。
第1問目は、難問が多い事例Ⅳの中では比較的易しい問題が多く、ここで確実に得点を稼いでおきたいところです。
というか、ここを落とすと合格点は難しいと言っても過言ではありません。
ここは定番の解答をすれば得点が取れるはずですが、なぜかオリジナリティあふれる解答をしてしまい、得点が伸び悩む人がいるようです。
今回は、確実に得点が取れるセオリーをご紹介したいと思います。
収益性・安全性・効率性の中から1つずつ選ぶ
基本中の基本となるセオリーです。
経営分析では「課題となる」もしくは「優れている」財務指標を「3つ挙げよ」という問題がほとんどですが、
- 収益性
- 安全性
- 効率性
の観点から1つずつ選ぶのが基本となります。
収益性
収益性は、3つの指標の中で、最も重要と言って良いと思います。
収益性は、損益計算書を分析して導き出します。
収益性の指標は、
- 売上高総利益
- 営業利益
- 経常利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益
の5つの利益の中から1つ選ぶことになります。
では、収益性を指摘するコツを書いていきたいと思います。
収益性を指摘するコツ
さて、どれの利益を選べばよいでしょうか?
セオリーとしては、上の利益から優先して選ぶということです。
「上」というのは、損益計算書上の位置のことです。
つまり、
なぜかというと、上の利益になればなるほど、下の利益に影響を与えるからです。
もし、売上高総利益率が悪い場合、それが原因で全ての利益が悪くなってしまいます。
その場合、元となる原因を指摘しないと意味がありません。
安全性
次は、安全性です。
安全性は、貸借対照表を分析します。
安全性は更に、
- 短期安全性
- 長期安全性
- 資本調達構造
の3つに分かれます。
では順番に「指摘するコツ」を見ていきましょう。
短期安全性を指摘するコツ
若干迷うところではありますが、短期安全性を分析する指標である、
- 流動比率
- 当座比率
は、どちらかを指摘したい場合、当座比率を選ぶ方が良いと思います。
計算式はこちらですね。
=(流動資産-棚卸資産)÷流動負債×100)
違いは、「棚卸資産」が入っているかどうかです。
棚卸資産に課題がある場合は、効率性のところで「棚卸資産回転率」を指摘することも可能です。
後述しますが、効率性は指摘しづらいので(私が苦手だったかもしれませんが)、もし棚卸資産に課題がある場合は、棚卸資産回転率に残しておきたいところです。
棚卸資産に問題がないのであれば、より細かな財務指標である当座比率を指摘することで、「具体的な原因が分かっているぞ」とアピールするわけですね。
長期安全性を指摘するコツ
こちらも若干迷うところではありますが、長期安全性を分析する指標である
- 固定比率
- 固定長期適合率
のどちらか指摘したい場合、固定長期適合率を指摘した方が良さそうです。
計算式はこちらです。
違いは、「固定負債」が入っているかどうかです。
固定比率が悪くても固定長期適合率が良い場合は、「固定資産への投資が固定負債で賄われているため問題ない」という判断になることも多いのです。
その場合は、長期安全性を指摘するよりも、短期安全性・資本構造のどちらかに課題があると考えたほうが良いと思います。
ちなみに、固定長期適合率を指摘する場合、実際に「固定長期適合率」と書けなくてはいけないですよね。
「長期固定適合率」と書いてしまいそうになりませんか?私はなりました。
私は「胡蝶蘭」と覚えました。
「胡蝶蘭」→「固長ラン」→「固定長期適合率」となり、間違えません。
どうでもいいですが、ご参考に。
資本調達構造を指摘するコツ
資本調達構造を示す財務指標は2つですね。
- 自己資本比率
- 負債比率
です。
計算式はこちらです。
違いは・・・ありません。
計算の仕方は違いますが、全く同じことを言っています。なので、どちらでも好みで良いと思います。
私は、
- 長年に渡って利益が出ておらず、自己資本を切り崩しながら経営してそうな場合
- →「自己資本が脆弱だぞ!」というメッセージを込めて、自己資本比率
- 単純に借りすぎな場合
- →「負債が多すぎだぞ!」というメッセージを込めて、負債比率
を指摘することが多かったと思いますが、まあ、どちらでもいいと思います。
私は自己資本比率が好きでした。
理由は、診断士の勉強をする前から知っていた言葉でしたし、いろんな会社の決算書を見て計算することも多かったので、絶対に計算方法を間違えないからです。
負債比率って、負債÷総資本×100って計算してしまいそうで、怖くて使いづらかったです。
「負債比率が好き」という声も聞いたことがあるので、これはもう、人それぞれですね。
効率性
さて、最後は効率性です。
効率性は、貸借対照表と損益計算書の両方を使用します。
指摘する財務指標は、
- 有形固定資産回転率
- 棚卸資産回転率
- 売掛債権回転率
あたりを使うことが多いと思います。
私はこの指標が一番嫌いでした。
- 貸借対照表と損益計算書の両方を使うし、
- 「率」とか言いながら単位は「%」ではなく「回」だし、
- この後の課題を書かせる設問でも指摘しづらいし、
苦手意識を持っていました。
ただ、1つだけ絶対に心がけていたことは、
「苦手だからといって、効率性の中から何も選ばないことはしない」
ということでした。
人それぞれ、苦手な指標はあると思いますが、苦手だからといって入れないのはやめましょう。
確実に減点対象です。
私の解答(平成30年度)
ちなみに、私が受けた平成30年度の事例Ⅳでも、第一問目は経営分析でした。
私はセオリー通り、
- 自己資本比率 35.59%
- 売上高営業利益率 1.20%
- 棚卸資産回転率 150.30回
と指摘し、合格点である72点を取ることができました。
私の再現解答は以下に書いています。
「課題の記述」を「財務指標の説明」にしない
私もよくやってしまったのですが、これをやってしまうと採点以前の問題になってしまいます。
どういうことか、説明しますね。
例えば「借入金が多く、課題となる財務指標で負債比率を指摘したい場合」があったとします。
「自己資本に比べ負債が多く、負債比率が高い」
という解答はNGです。なぜでしょうか?
これは、負債比率という財務指標の説明であって、D社の説明ではないからです。
ちゃんと与件文から「負債比率が高くなった原因」を抜き出し、「(例えば)借入金が多く安全性が低い」と書く必要があるわけですね。
他にも、
- 販管費が高く営業利益率が低い
- 当座資産が少なく、当座比率が低い
- 固定資産が多く、固定比率が悪い
という説明は全て、その財務指標の説明になっています。
少し文章を変えるだけで良い解答になると思いますので注意してください。
文字を詰め込む
ここ数年、経営分析の後の記述問題の文字が、明らかに減ってきています。
以下の表を見てください。
平成25年度以降で減少傾向が見られますが、特に直近の2年間。
- 平成29年度の40字
- 平成30年度の50字
「収益性」「安全性」「効率性」という文字だけで9文字ですよ!?
どう考えたって少なすぎです。
まあ「少なすぎ!」と怒っていても仕方がないので、文字を詰め込む練習をするしかありません。
ただ、逆に考えると、文字が少ないということは、書けることが限られてくるわけです。
つまり、うまく「収益性」「安全性」「効率性」を詰め込むことができれば、満点に近い点数が取れる可能性が高いです。
うまくキーワードを広い、3つの指標を指摘する練習をしましょう。
あと、この件は、過去問の有効性にも影響します。
過去問をたくさんこなす熱心な受験生ほど、注意が必要です。
平成23年度以前の過去問に取り組む際、当時の文字数で練習しても効果が薄い可能性があるので、注意した方が良いと思います。
最後に
中小企業診断士の試験では、誰もが解ける問題を確実に解くことが非常に重要です。
難問が多い事例Ⅳで、第1問を間違えてしまうと合格点は難しいでしょう。
練習を繰り返し、確実に得点できるよう、頑張ってください!