二次試験の本質に迫る【キーワード or 文章】

二次試験の本質に迫る【キーワード or 文章】

「中小企業診断士の二次試験は、キーワードを盛り込めれば高得点が取れる。」

「いや、そうではない。正しい日本語・上手な文章を書くことこそが重要だ。」

 

こんにちは。中小企業診断士のまっころです。

 

中小企業診断士の二次試験は、

  • 記述式
  • 解答が公開されない
  • 採点の基準があいまい

ということで、何を書けば正解なのかよく分からない試験になっています。

 

そのため、「確実に二次試験に合格できる手法」が存在しづらく、各々がそれぞれ持論を展開し、何を信じて良いか分からない受験生も多いと思います。

 

本記事では二次試験に挑むにあたり、

  • キーワードを網羅することを重視した方が良いのか
  • 正しくわかりやすい文章を書いた方が良いのか

を考えながら、二次試験の本質に迫りたいと思います。

 

キーワード派と文章派

二次試験に挑む受験生には、

  • キーワード派
  • 文章派

の2通りがいると思います。

 

どちらか100%という人もいれば、「どちらかと言えば○○派」という人もいるでしょう。

 

愛用者が多い「ふぞろいシリーズ」はキーワード重視の採点となっていますので、ふぞろいユーザーにはキーワード派が多い気がします。

私もふぞろい中心で勉強しましたので、どちらかと言えばキーワード派でした。

 

あなたはどちらですか?

 

この2つを比べる前に、まずは「前提条件」を書いていきますね。

 

キーワードは正しく入っていた方が良いし、日本語は正しく文章は上手な方が良い

まずはこれです。

 

キーワード派とはいえ、

  • 日本語は正しい方が良いし、
  • 文章は上手な方が良い

です。

 

文章派とはいえ、

  • 正しいキーワードがしっかり書かれていた方が良い

です。

 

当たり前ですね。

キーワードが充分で、日本語が自然で文章が上手であれば、そりゃあ受かります。問題なのは、どちらかがダメな場合です。

 

 

問題なのは、

  • キーワードは盛り込まれているが、日本語が若干不自然
  • 日本語は正しいがキーワードが足りない

を比べたら、どちらが高得点か?ということですよね。

 

問題は「キーワードか?文章か?」ではない

さて、私は、この争いは本質的には、

  • キーワードか?
  • 文章か?

ではないと考えています。

 

では何と何なのか?

 

私が考えるのは、

  • 戦略か?
  • 戦術か?

です。

 

この2つを掘り下げていきたいと思います。

 

戦略とは?

まずは、戦略とは何でしょうか?

 

広辞苑で調べてみます。

せん‐りゃく【戦略】

(strategy)戦術より広範な作戦計画。各種の戦闘を総合し、戦争を全局的に運用する方法。転じて、政治・社会運動などで、主要な敵とそれに対応すべき味方との配置を定めることをいう。「販売上の―」

引用元:広辞苑

 

戦略とは、

  • 戦術より広く
  • 総合的に
  • 全局的に

述べられなければなりません。

 

戦術とは?

対して、戦術とは何でしょうか?

せん‐じゅつ【戦術】

(tactics)戦闘実行上の方策。一個の戦闘における戦闘力の使用法。一般に戦略に従属。転じて、ある目的を達成するための方法。「―を誤る」

引用元:広辞苑

 

戦術は、

  • 戦略より狭く、
  • 戦略を実行するための方法

が述べられなければなりません。

 

戦略と戦術

繰り返しますが、

  • 戦略は範囲が広い
  • 戦術は範囲が狭い

です。

 

また、誤解を恐れずに言うと、

  • 戦略は「何を」するか
  • 戦術は「どうやって」するか

を述べなければなりません。

 

では、二次試験の解答に書くべきことはどちらでしょうか?

戦略でしょうか?戦術でしょうか?

 

なんとなく想像はつくかもしれませんが、念のため、過去問を確認してみます。

 

「戦略」という言葉が使われた問題

平成30年度~26年度の5年間の問題文の中で、「戦略」という言葉が使われているところを探してみました。

 

平成30年度 事例Ⅰ 第1問

研究開発型企業である A 社が、相対的に規模の小さな市場をターゲットとしているのはなぜか。その理由を、競争戦略の視点から100字以内で答えよ。

平成29年度 事例Ⅰ 第3問

A 社が工業団地に移転し操業したことによって、どのような戦略的メリットを生み出したと考えられるか。100字以内で答えよ。

平成28年度 事例Ⅱ 第1問

B 社のこれまでの製品戦略について、80字以内で整理せよ。

平成28年度 事例Ⅱ 第2問 設問1

B 社の今後の成長に必要な製品戦略について、ターゲット層を明確にしたうえで、100字以内で説明せよ。

平成28年度 事例Ⅱ 第2問 設問2

B設問Cで想定したターゲット層に訴求するための、プロモーションと販売の戦略を80字以内で説明せよ。

平成28年度 事例Ⅱ 第4問 設問1

インターネット販売を軌道に乗せるために B 社が採るべきブランド戦略を50字以内で提案せよ。

平成27年 事例Ⅱ 第1問 設問3

設問2で解答した業種の店と B 商店街の主力である既存の飲食店とのテナント・ミックス<店舗の組み合わせ=の効果を最大化するために、個々の飲食店の店主達はどのようなマーケティング戦略をとるべきか。助言内容を50字以内で述べよ。

平成27年 事例Ⅱ 第3問 設問1

代表理事は、B商店街の魅力向上に向け、食品小売店の誘致が必要であると考えている。B商店街はどのような食品小売店を誘致すべきか。当該食品小売店のマーケティング戦略と併せて、代表理事への助言内容を 100 字以内で述べよ。

平成26年度 事例Ⅱ 第2問

B 社は現在、介護付きツアーにより、一度離反した顧客を再び顧客とすることに成功しつつある。現社長は次に、介護付きツアーの新規顧客獲得を目指している。そのためのコミュニケーション戦略として、SNS サイト上で介護付きツアーの画像や動画をプライバシー侵害のない範囲で旅行記として紹介している。しかし、要支援・要介護の高齢者本人にはあまり伝わっていないことが明らかになった。この状況を勘案し、新規顧客獲得のための新たなコミュニケーション戦略を100字以内で述べよ。

平成26年度 事例Ⅱ 第3問 設問2
デシル分析結果から、上位顧客と下位顧客の総利用金額の差がどのような要因によって生じているか、数値を用いて説明せよ。その結果から導かれるB社が戦略的にターゲットとすべき顧客像と併せて 120 字以内で述べよ。

 

あるわ、あるわ。たくさん出てきました。

「戦略」という言葉は多く使われていますね。

 

全て事例Ⅰと事例Ⅱでしたが、過去5年間で10問ありました。

 

「戦術」という言葉が使われた問題

平成30年度~26年度の5年間の問題文の中で、「戦術」という言葉が使われているところを探してみました。

 

・・・。

 

・・・1つもありませんでした

 

与件文にすら、「戦術」という言葉は1つも出てきませんでした

 

解答すべきは「戦略」

これではっきりしました。

二次試験では、「戦略」を述べることが求められています。

 

ふぞろいを確認してみよう

ここで、ふぞろいな合格答案の、1つの事例を取り上げてみたいと思います。

 

平成30年度の試験問題を取り扱った「2019年版 ふぞろいな合格答案(エピソード12)」の事例Ⅰです。

平成30年度 事例Ⅰ 第4問

A 社が、社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、金銭的・物理的インセンティブの提供以外に、どのようなことに取り組むべきか。中小企業診断士として、100字以内で助言せよ。

解答①

取組は①社員への権限移譲4外部研修4の提供③研究に専念しやすい施設の整備④チャレンジを推奨する評価4基準策定⑤社内提案制度4の創設⑥主力取引先以外との共同PJ3を推進し社員の士気を向上3させ組織活性化2を図る。

ふぞろい流採点基準による採点:20点 / 20点

 

解答②

A社は、①特許表彰3などで技術者の新規開発へのモチベーションを高め3、②家族主義的要素を充実させて、専門技術を持つ、地元出身の中途採用者の定着率を向上させ、チャレンジ精神や独自性を維持すべきである。

ふぞろい流採点基準による採点:6点 / 20点

 

いかがでしょうか。

解答①はなんと満点の20点。それに引き換え、解答②は僅か6点

(もちろん「ふぞろい流採点基準による採点」なので実際の得点は分かりませんが。)

 

 

この差はなんでしょうか?

どう感じられましたか?

 

もしかしたら、「解答①はキーワードを並べただけじゃないか!」と思われましたか?

 

もしかしたら、「解答②は具体的な手法まで書かれているし、日本語も正しいし、文章も上手いじゃないか!これで得点が低いのはおかしい!」と思われましたか?

 

本当にそうでしょうか?

 

解答①を分析してみる

解答①を改めて分析してみましょう。

 

解答①

取組は①社員への権限移譲4外部研修4の提供③研究に専念しやすい施設の整備④チャレンジを推奨する評価4基準策定⑤社内提案制度4の創設⑥主力取引先以外との共同PJ3を推進し社員の士気を向上3させ組織活性化2を図る。

ふぞろい流採点基準による採点:20点 / 20点

 

二次試験は戦略を述べる必要がありました。

そして、戦略とは「何をするか」を述べることでした。

 

それを踏まえて解答を見るといかがでしょうか?

 

ちゃんと「何をするか」が述べられていますね。

「どうやってするか」が述べられていないので、箇条書きのように見えますが、この解答は、ちゃんと「戦略」が述べられているのです。

 

正に、二次試験で求められている解答です。

 

解答②を分析してみる

解答②を改めて分析してみましょう。

 

解答②

A社は、①特許表彰3などで技術者の新規開発へのモチベーションを高め3、②家族主義的要素を充実させて、専門技術を持つ、地元出身の中途採用者の定着率を向上させ、チャレンジ精神や独自性を維持すべきである。

ふぞろい流採点基準による採点:6点 / 20点

 

改めて見ると、

  • 「何をするか」ではなく「どうやってするか」
  • 「戦略」ではなく「戦術」

が述べられているような気がしませんか?

 

特にこの部分。

「②家族主義的要素を充実させて、専門技術を持つ、地元出身の中途採用者の定着率を向上させ、」

 

完全に「どうやってするか」を述べています

 

これは「戦術」です。二次試験で求められている解答ではありません。

 

採点者(経営者)に言わせる言葉

受験生の中には、採点者(試験なので採点者ですが、実際には経営者です)に、「『あなたの助言は素晴らしい!』と言わせたい!」と思いながら書く人もいるかもしれません。

 

しかし、二次試験で採点者に言わせるべき言葉は「あなたの助言は素晴らしい!」ではありません。

 

なぜでしょうか?

 

理由は文字数制限

当たり前ですが、二次試験には文字数制限があります。

 

「あなたの助言は素晴らしい」まで書こうとすると、文字数が足りません

もしくは、1つの助言だけで解答欄が埋まってしまいます

 

これでは高得点は取れません。

 

二次試験のノウハウで、

  • 助言は2~3個書いた方が良い
  • あまり突っ込んだところまで書かない方が良い

などは、聞いたことがありますよね?

 

採点者に「あなたの助言は素晴らしい」と言わせることは諦めた方が良さそうです。

 

では、採点者に言わせるべき言葉は何でしょうか?

 

採点者には「詳しく聞かせてくれ!」と言わせよう

採点者に言わせるべき言葉は「あなたの助言は素晴らしい!」ではなく、「詳しく聞かせてくれ!」です。

 

最終的には、採点者(くどいようですが、試験なので採点者ですが、実際には経営者です)には、戦略も戦術も提案しなければならないと思います。

 

ただ、二次試験には文字数制限がありますから、全てを書くことはできません。

そこで、短いながらも正しい戦略が提案できると、「詳しく聞かせてくれ!」と言うはずです。

 

先ほど分析した解答を見てみます。

 

解答①

取組は①社員への権限移譲4外部研修4の提供③研究に専念しやすい施設の整備④チャレンジを推奨する評価4基準策定⑤社内提案制度4の創設⑥主力取引先以外との共同PJ3を推進し社員の士気を向上3させ組織活性化2を図る。

ふぞろい流採点基準による採点:20点 / 20点

 

この提案を高く評価した経営者は、

  • 社員へ権限を委譲する際、注意すべき点にはどんなことがありますか?
  • 外部研修をやりたいので、良い講師を紹介してくれませんか?

などの「詳しく聞かせてくれ!」という方向の質問が来るはずです。

 

それをついつい書きすぎてしまって、

  • ○○や○○に注意して、社員へ大幅に権限を委譲する
  • ○○や○○の繋がりを生かして、外部講師を招聘し、研修を実施する

まで書きたくなりますが、書いてはダメです。

 

理由は、先ほども書きましたが、文字数制限があるからです。

逆に言えば、少しの文字数で書けるレベルなら書いても良いですね。

 

そして、逆に、採点者に言わせてはいけない言葉があります。

それはどんな言葉でしょうか?

 

採点者には「他には?」と言わせてはいけない

採点者には「他には?」と言わせてはいけません。

 

改めて先ほど分析した解答を見てみます。

 

解答②

A社は、①特許表彰3などで技術者の新規開発へのモチベーションを高め3、②家族主義的要素を充実させて、専門技術を持つ、地元出身の中途採用者の定着率を向上させ、チャレンジ精神や独自性を維持すべきである。

ふぞろい流採点基準による採点:6点 / 20点

 

この提案が高く評価されたとしても、「なるほど。表彰制度を導入して、中途採用者の定着率を上げるんだね。で、他には?」と言われるような気がしませんか?

 

戦術まで書くと、どうしても戦略が数多く書けません。

なので、採点者は「他には?」と聞いてしまうのですね。

 

最後に

いろいろ書いてきましたが、

  • キーワード派=戦略派
  • 文章派=戦術派

になっているのではないかと思うのです。

 

つまり、

  • 戦略を短い文章で表せばキーワード羅列になりやすく、
  • 1つの戦略を戦術まで詳しく書けば、分かりやすい文章を書ける(しかし、1つしか書けない)

になると思うのです。

 

キーワード羅列を良しとしない人もいると思いますが、こんな考え方はいかがでしょうか?

 

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