財務・会計徹底分析その4 意思決定会計を理解するために必要なこと

財務・会計徹底分析その4 意思決定会計を理解するために必要なこと

こんにちは。まっころです。

今回は、二次試験にも大いに影響し、苦手な方も多いと思われる「意思決定会計」について解説していきます。

意思決定会計そのものではなく、意思決定会計の問題を解くために必要な2つのことの解説をします。意思決定会計の問題をよく間違える人は、この2つのことの理解が浅い可能性があります。

意思決定会計とは

企業が設備投資を行う際に、

  • 投資をすべきか否か
  • 投資案が複数案ある場合、どの投資案にすべきか

を判断するため(意思決定するため)に、投資案ごとの損益を正しく計算することです。

事前に理解しておくべきこと

意思決定会計の問題に取り組む前に、事前に理解しておくべきことが2つあります。

  • キャッシュフローの概念
  • 時間価値の概念

です。

キャッシュフローの概念(会計上の収益との違い)

まずは、意思決定会計で使うキャッシュフローについて、正しく理解する必要があります。特に、会計上の収益計算とは異なるため、注意が必要です。

例えば、

  • 取得価額:1,000万円
  • 耐用年数:5年
  • 残存価額:取得価額の10%
  • 定額法にて減価償却

の設備投資を行う場合、この投資による各年の収益への影響はどうなるでしょうか?

  • 機器取得時:影響なし(1,000万円の現金が機械に変わっただけ)
  • 初年度~5年目:減価償却により、毎年180万円の費用増
  • 機器処分時:影響なし(残存価額100万円の機械が現金に変わっただけ)

となりますよね?

 

しかし、これをキャッシュフローで計算すると全く異なる計算になります。

  • 機器取得時:▲1,000万円(キャッシュが1,000万円減った)
  • 初年度~5年目:+72万円(法人税40%の場合)
  • 機器処分時:+100万円(残存価額100万円の機械を売り、キャッシュが増えた)

特に、初年度~5年目の+72万円が重要です。

これは、減価償却により、毎年180万円の収益が下がるため、払う税金が減ったためです。(タックスシールドといいます)

設備投資を行った影響で、支払う税金が減ったため、設備投資により現金が増えたという扱いをします。

この点は、理解するまでじっくり考えてくださいね。

時間価値の概念

もう1つ理解しておかなければならないことは、時間価値の概念です。これは、計算はややこしいのですが、理解はしやすいと思います。

要は、現在の100万円と5年後の100万円はどちらが価値が高いか?ということです。

答えは「現在の100万円の方が価値が高い」です。理由は、現在の100万円には金利が付いて、5年後には100万円以上になるからですね。

銀行に預けてもいいですし、株や為替などに投資して運用してもいいはずです。

それらの選択肢よりも設備投資の方が利回りが良いからこそ設備投資を行うということなので、5年後に100万円が得られる設備投資案に、現在の100万円の価値はありません。

5年後の100万円を現在の価値に直す必要があります。これを「現在価値に割り引く」と言います。

 

計算方法は、公式を見るとややこしいのですが、実はシンプルです。

現在の100万円は、金利が5%の場合、5年後はいくらになるでしょうか?

  • 100万円×1.05×1.05×1.05×1.05×1.05=127万6,281円(端数切り捨て)

となります。

では、5年後の100万円の現在価値はいくらでしょうか?

同じく金利が5%の場合、

  • 100万円÷1.05÷1.05÷1.05÷1.05÷1.05=78万3,526円(端数切り捨て

となります。×が÷に変わっただけですね。

これを計算するのは大変なので、(一次試験は電卓使用不可ですし)下記のような複利現価係数表や年金現価係数表が与えられます。

  1年 2年 3年 4年 5年
複利現価係数 0.9524 0.9070 0.8638 0.8227 0.7835
年金現価係数 0.9524 1.8594 2.7232 3.5460 4.3295

見るとややこしくて頭が痛くなってくるのですが、実は計算方法はシンプルで、以下のような計算結果が入っているだけです。

  1年 2年 3年 4年 5年
複利現価係数 1÷1.05 1÷1.052 1÷1.053 1÷1.054 1÷1.055
年金現価係数 1÷1.05 ←と↑の
数字を足す
←と↑の
数字を足す
←と↑の
数字を足す
←と↑の
数字を足す

上記で、100万円÷1.05÷1.05÷1.05÷1.05÷1.05=78万3,526円(端数切り捨て)という計算をしましたが、複利現価係数を使うと100万円×0.7835=78万3,500円と計算を簡略化できます。

下2桁の数字が異なりますが、気にしなくて良いです。

年金現価係数はちょっとややこしいのですが、毎年100万円ずつ収益が出て、5年後に500万円になった場合、その5年後に500万円の現在価値はいくら?という計算ができます。

単純な「5年後の500万円」ではないことに、注意が必要です。

100万円÷1.05+100万円÷1.052+100万円÷1.053+100万円÷1.054+100万円÷1.055=432万9,476円(端数切り捨て)という計算が、100万円×4.3295=432万9,500円と計算を簡略化できます。

最後に

さて、キャッシュフローの概念・時間価値の概念が理解できれば、意思決定会計の問題は解くことができます。計算ミスをしないよう、頑張って解いてください。

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