「中小企業診断士の合格には簿記2級レベルが必要?」
「財務・会計の対策に、まず簿記2級を取るべき?」
こんにちは。中小企業診断士のまっころです。
本記事では、中小企業診断士の財務・会計に合格するために、簿記2級を取るべきか?ということについて、書いていきたいと思います。
簿記3級取得をお考えの方もいらっしゃいますよね。簿記3級についてはこちらで書いています。
簿記2級の内容
簿記2級とは?
簿記2級というと、一般的には日商簿記2級を指すことがほとんどです。
日商簿記2級のレベルは、
経営管理に役立つ知識として、企業から最も求められる資格の一つ。高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル。
引用:日本商工会議所ホームページ https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping
だそうです。
ちなみに、下位資格である日商簿記3級のレベルは、
業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」として、多くの企業から評価される資格。 基本的な商業簿記を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うために求められるレベル。
引用:日本商工会議所ホームページ https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping
となっています。
簿記3級の、
- 基本的な商業簿記
からレベルが上がり、
- 高度な商業簿記
- (簿記2級からの新たな分野である)工業簿記
を習得する必要があります。
簿記を勉強する方は、この簿記2級取得を目標とされる方が多いと思います。
目安となる勉強時間は、
- 簿記3級:約50時間
- 簿記2級:約100時間
だそうです。
それなりに時間が必要ですね。
商業簿記
日商簿記2級の商業簿記で学習する範囲は、簿記3級の延長線上にあります。
ただ、相当細かくなり、覚えるべきことが大幅に増えています。
商業簿記の範囲は、
- 税効果会計
- 連結会計
- 本支店会計
- リース取引
など、財務・会計の学習範囲と内容が重複します。
ただ、簿記2級の本試験で問われることは、
- 仕訳しなさい
- 総勘定元帳を埋めなさい
- 精算表・貸借対照表・損益計算書を埋めて完成させなさい
というもので、帳簿記入が中心となります。
工業簿記
工業簿記は、2級で新たに学習する範囲です。
内容は、
- 材料費、労務費、経費
- 個別原価計算
- 部門別個別原価計算
- 総合原価計算
- 工業簿記の財務諸表(製造原価報告書)
- 標準原価計算
- 直接原価計算
- (基本的な)CVP分析
など。
財務・会計の範囲ととても近いですね。
財務・会計との関連
さて、ここまでで、財務・会計と簿記2級の学習範囲は、かなりの部分で重複することが分かりました。
「やっぱりそうだったのか。では、簿記2級の取得を目指して頑張ろう!」
と、なりますか?
ちょっと待ってください。
財務・会計ってこれだけでしたっけ?何か忘れていませんか?
財務・会計と簿記1級
何か忘れていませんか?
財務・会計の学習範囲で、重要な論点を忘れていませんか?
例えば、
- 利益率、原価率
- デリバティブ
- ワンイヤールール
- 新株予約権
このあたりは、簿記2級では出てきません。
簿記1級の学習範囲となります。
まだありますよね。難問が多いあの論点。
- キャッシュフロー計算書
- セールスミックス
- (本格的な)CVP分析
- 時間価値の概念(福利原価係数・年金原価係数)
- 意思決定会計
財務・会計だけでなく、事例Ⅳでよく問われる、本当に重要な論点です。これも簿記1級の範囲です。
そうなんです。
簿記2級を完璧に習得しても、まだまだ財務・会計で学ぶべきことが多くあるのです。
簿記1級を取りますか?
どうしましょう?簿記1級を目指しますか?
簿記1級は、簿記2級までの知識があるという前提で、約500時間の勉強が必要だそうです。
そして、合格率はなんと、10%前後です。
「いや、簡単な年に当たれば運良く合格できるかも・・・」と考えた方、甘いです。
簿記1級は相対評価と言われています。受験生の出来具合によって、配点が変わるらしいのです。
つまり、
- 簿記2級の知識を身につけた人
- 会計士や税理士を目指す人
の中の上位10%に入る必要があるということです。
しかも、
- 商業簿記
- 会計学
- 工業簿記
- 原価計算
の4科目があり、70%以上で合格。各科目40%以下は足切りという厳しい制度もあります。
多い科目に得点調整に足切り制度。
う~ん、こんな制度、まるでどこかの試験のようですね。
ちなみに、中小企業診断士は一次試験7科目の合格率は約20%です。
財務・会計の科目合格も足すと、約25~50%程になります。
もちろん、合格率がそのまま難易度に繋がるわけではありませんが、シンプルに財務・会計の合格を目指した方が良いと思いませんか?
「いやいや、話が変わっている。簿記1級を目指すのではなく、私が受けたいのは簿記2級だ!」という声が聞こえてきそうです。
では、質問ですが、
「財務・会計の重要論点が多く含まれる簿記1級を避け、簿記2級を取るメリットは何でしょうか?」
「中小企業診断士を目指す上で、簿記2級に合格することで得られるメリットは何でしょうか?」
しかも、
- 経営分析
- 企業価値の算定
- 最適資本構成
- CAPM
- 共分散や総関係数
このあたりは簿記一級の範囲ですらありません。簿記を充分に学んだ人でも、新たに学び直す必要があるのです。
メリット・デメリットをしっかり考えよう
簿記2級は素晴らしい資格
さて、完全に「簿記2級は不要」という論調でここまで書いてきましたが、簿記2級を取得する意味がないと言っているわけではありません。
簿記2級の学習を通じて得られる知識には大きな価値があります。
ビジネスパーソンとして取りたい資格であることは間違いありません。
更に、簿記1級ともなれば、経理のスペシャリストとして活躍できるどころか、会計士・税理士などへの道も開けるかもしれません。
中小企業診断士よりよっぽどメジャーで、実務にも役立ちそうです。
充分に勉強する価値のある資格です。
ただ、中小企業診断士の財務・会計、事例Ⅳに合格するための戦略としてはどうでしょうか?
簿記2級の学習範囲のうち、財務・会計に含まれる部分も多くありますが、逆に含まれない部分も多くあります。
簿記2級の取得をお勧めできる人
以下の記事は、簿記3級と財務・会計について書いたものです。
ここでは、簿記3級の取得をお勧めできる人は、
- 簿記3級をスモールゴールにしたい人
- 学生さんや社会人なりたてで、簿記3級が会社からも評価されやすい人
- 経理関係の仕事をしているorしたい人
- 一次試験に合格するのに、1年以上かけて良いと考えている人
だと書きました。2級はどうでしょうか?
上記のうちの2つは、
- 簿記2級をスモールゴールにしたい人
- → 簿記3級と違い、スモールゴールとは言いづらい。
- 一次試験に合格するのに、1年以上かけて良いと考えている人
- → 簿記2級に1年かかってしまう可能性もある
ということで、これらの人は簿記3級までにした方が良いと思います。
逆に、
- 学生さんや社会人なりたてで、簿記2級が会社からも評価されやすい人
- 経理関係の仕事をしているorしたい人
これらの人にはお勧めできます。
簿記2級は就職活動にも役立つでしょうし、経理関係の仕事をする上ではむしろ必須の資格と言えます。
簿記2級をしっかり勉強し、財務・会計の勉強にも役立てるのが良いと思います。
最後に
若干「簿記2級は不要」という書き方になりましたが、私が言いたいのはそういうことではありません。
「『財務・会計は簿記2級程度の知識が必要だから、まず簿記2級を取ろう』と短絡的に考えるのではなく、ちゃんと考えて決めよう」ということです。
財務・会計に限らず、中小企業診断士の試験では、何を勉強するか考えるところから、勉強は始まっています。
時間は有限です。じっくり考えて、効率的な勉強方法を選択しましょう。