「中小企業診断士の財務・会計と簿記2級は同程度?」
「簿記3級は必要だけど、2級までは不要?」
「簿記の学習は効率が悪い。財務・会計に集中すべき?」
こんにちは。中小企業診断士のまっころです。
一次試験の科目である財務・会計と簿記はどれくらいの関連があるのでしょうか?
財務・会計の勉強をする前に簿記の資格を取るべきか。
様々な人が様々なことを言っています。
今回は、財務・会計と日商簿記3級について、徹底的に書いていきたいと思います。
簿記2級についてはこちらで書いています。
私の場合
私と日商簿記検定
私は、
- 平成15年2月の日商簿記3級に合格し、
- 平成15年6月の日商簿記2級に合格し、
- 同じく平成15年6月の日商簿記1級に落ちました。
当時は、「どうせなら1級を目指そう」と勉強したものの、合格できたのは2級まででした。
今から15年以上前ですね・・・。
中小企業診断士の勉強を始めた当初は、仕訳のルールなどの多くの部分を忘れてしまっていました。
ただ、やはり一度、2級を合格できるレベルまで勉強したという効果は絶大で、財務・会計は得意科目となり、
- 1年目の一次試験では、76点を獲得し、科目合格
- 2年目の一次試験では、最低限の復習のみで64点を獲得し、一次試験合格に貢献
- 二次試験の事例Ⅳでは、全事例の中で最高得点の72点を獲得
と、中小企業診断士になれたのはこの科目のおかげと言っていいほど、役に立ちました。
簿記を取ったその後
さて、私が簿記2級を取ってから感じたことで、忘れられないことがあります。
資格を取得した数年後、もう10数年前ですが、私は営業マンになっていました。
そこで、取引先の、
- 貸借対照表
- 損益計算書
を見る機会がありました。
当時私は、「簿記1級の勉強経験があり、簿記2級を持っている」ということで、決算書を読めると思い込んでいました。
見てみると・・・
「全く分からない・・・」
全く分からなかったのです。あれほど勉強したのに。
何が書いてあるかは分かるのですが、そこから何も読み取れない、読み解くことができない。
そこで初めて知りました。
「決算書を書く力と読む力は全く違うんだ・・・」
ショックでした。
日商簿記のホームページでは、簿記を勉強することで、
このような効果が期待できます
- 正しく帳簿をつけられる
- 自社の長所や短所を分析できる
- 費用や収益率を意識するようになる
- 取引先企業の経営状況を把握できる
引用元:日本商工会議所ホームページ https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping
と書いてありますが、少々オーバーだと思います。
少なくとも、簿記2級までの勉強では、せいぜい「正しく帳簿をつけられる」までです。
そこから先は、簿記1級、または中小企業診断士 財務・会計の分野です。
簿記はあくまで帳”簿記”入なのです。
結局、記資格は必要なのか!?
「結局のところ、簿記は必要なのか、必要じゃないのか?どっちなんだ?」
そう感じられたかもしれません。
しかし、ことはそう単純ではありません。もう少し掘り下げてみたいと思います。
簿記3級ってなんだ?
簿記3級って?
今回、財務・会計と簿記3級の比較をするにあたり、改めて簿記3級のテキストを購入しました。
簿記教科書 パブロフ流でみんな合格 日商簿記3級 テキスト&問題集 第4版です。
ちなみに、この本、評判も良いですしお勧めですよ。
私が簿記3級の勉強をし、資格取得をしたのは15年以上も前になるからです。試験範囲も大きく変わっています。
ただ、テキストを眺めていくうちに、徐々に試験の内容を思い出してきます。
簿記3級の内容は、おおざっぱに書くと、
- 簿記の基礎
- 勘定科目と仕訳
- 決算整理仕訳と財務諸表の作成
の3段階と言えます。
勉強を通じて、
- 簿記の基礎を学び、
- 勘定科目を覚え、仕訳ができるようになり、
- 決算整理仕訳を理解し、それを元に財務諸表が作れるようになれば、
簿記3級の試験に合格できます。
では、この1~3を順番に書いていきますね。
1.簿記の基礎
まず、簿記3級のテキストでは、簿記の基礎について、丁寧に教えてくれることが多いです。
- 簿記って何?
- なぜ簿記が必要なの?
- 仕訳って何?
- 勘定科目って何?
この辺りのことが分からない方は、まずは簿記3級のテキストを購入した方が良いでしょう。
現時点で分からなくても全く問題ありません。
簿記は、仕事で縁が無かったり、そもそもまだ学生さんだったりすると、知らなくて当然です。
理解してしまえば難しくありませんが、財務・会計のテキストはそこまで丁寧ではないことが多いです。
入口は簿記3級のテキストが適しています。
ちなみに、ここが理解できていないと、合格どころか問題文を理解することすら難しいレベルかもしれませんので、絶対に理解する必要があります。
2.勘定科目と仕訳
勘定科目と仕訳は、簿記3級の勉強でメインの分野と言って良いでしょう。
簿記の試験では、必ず仕訳の問題が出題されます。
この「勘定科目と仕訳」の分野では、
- 企業ってこういう取引をするよ
- この場合はこういう勘定科目を使うよ
- そして、こうやって仕訳するよ
という順番で、ひたすら仕訳を学んでいきます。
例えば、
- 企業は、売るための商品を買って、代金を後払い(掛け払い)することがあるよ
- その場合は、「仕入」「買掛金」という勘定科目を使うよ
- そして、「仕入 〇〇〇 / 買掛金 〇〇〇」(〇〇〇は金額です)という仕訳をするよ
という順番で、様々な取引を知り、勘定科目を覚え、仕訳ができるようにしていきます。
実はこの中で「1」「2」はメチャクチャ重要なのですが、「3」はそれほど重要ではありません。
簿記検定では「仕訳しなさい」という問題が多く出ますが(というか、「仕訳しなさい」という問題がメイン)、財務・会計ではほとんど出ません。
せいぜい1~2問でしょう。
(直近だと平成30年度に1問、平成27年度に2問、ズバリ仕訳問題が出ています。)
この、「財務・会計では仕訳の問題は出ない」という点が、「簿記必要・不必要論争」を巻き起こしていると言っても過言ではありません。
仕訳って、一度理解してしまうと簡単なのですが、理解するまでがややこしく、ここでつまづいてしまうことも多いと思います。
この重要でやっかいな「仕訳」というジャンルを、
- 財務・会計のテキストでは、簡単に説明されているだけだったり、
- 予備校の講義でも、ざっと流すだけの説明だったり、
して、最初に理解できていないと、後々苦手意識をずっと引きずることになります。
3.決算整理仕訳と財務諸表の作成
決算整理仕訳も非常に重要です。
簿記3級試験の最終問題は、
- 決算整理仕訳を行い、
- 試算表・精算表・貸借対照表・損益計算書のどれかを作成する
という問題が定番です。
簿記3級では、
- 企業って、決算時にこういう処理が必要になるよ
- この場合はこういう勘定科目を使うよ
- そして、こうやって仕訳するよ
- その仕訳は、このように試算表・精算表貸借対照表・損益計算書に反映されるよ
という順番で、勉強していきます。
これも、先ほどと同じように、
- 企業って、決算時にこういう処理が必要になるよ
- この場合はこういう勘定科目を使うよ
はメチャクチャ重要です。
ここで、
- 経過勘定
- 減価償却
- 貸倒引当
などを勉強します。
この部分を理解せずに中小企業診断士の試験に挑むのは無謀すぎます。
ただ、それを「仕訳できることが重要か?」と言われるとそうでもありません。
「決算整理仕訳を仕訳しなさい」という問題は、恐らく出ないと思います。
ただ、
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
を読んだり、分析したりするためにはこれらの知識が大前提となるため、やはりこの分野の知識は重要です。
お勧めの方法
財務・会計との比較
さて、どうすれば良いでしょうか?
ここで、中小企業診断士の財務・会計のテキストを見てみます。
テキストにもよると思いますが、私が利用したTAC 財務・会計 スピードテキストでは、最初に勉強する分野は「財務諸表概論」です。
いきなり、「企業というものは、財務諸表を作らなければならない」から始まるのです。
- 簿記3級は「財務諸表を作る」がゴールですが、
- 財務・会計は「(既に作られた)財務諸表」がスタートです。
簿記3級のゴールが、財務・会計のスタートに繋がるのです。
いきなり、財務・会計に取り組んでも意味が分からないのは仕方がないと思いませんか?
お勧めの勉強法
ここまでをまとめると、
- 簿記の基礎はとても重要
- 簿記3級の範囲はとても重要だが、仕訳の練習はそれほど重要ではない
- 簿記3級のゴールは、財務・会計のスタートに繋がっている
ということになりますね。
なので、一番のお勧めは、
- 簿記3級の試験に受かるためには、仕訳をたくさん練習する必要があり、無駄も多い。
- 財務・会計のテキストに入る前に、簿記3級のテキストで、簿記の基礎を学ぶと良い。
- 理由は、簿記3級のテキストは、その部分をとても優しく説明してくれるから。
です。
でも人それぞれ事情が違うはずです。
簿記3級の取得をお勧めできる人とできない人を挙げてみたいと思います。
簿記3級の取得をお勧めできる人
財務・会計を勉強するにあたり、簿記3級の知識は必須ですが、仕訳の練習は無駄になりやすいんでした。
それを踏まえて、簿記3級の取得をお勧めする人は、
- 簿記3級をスモールゴールにしたい人
- 学生さんや社会人なりたてで、簿記3級が会社からも評価されやすい人
- 経理関係の仕事をしているorしたい人
- 一次試験に合格するのに、1年以上かけて良いと考えている人
です。
簿記3級の知識は重要ですが、「簿記3級を取得するための勉強」は若干無駄もありますので、このようになります。
簿記3級の取得をお勧めできない人
逆に、簿記3級の取得をお勧めできない人は、以下のような人です。
まあ、「お勧めできる人」の逆なのですが、
- 財務・会計を一気にマスターしたい人
- 簿記3級が会社からの評価に繋がらない人
- 経理関係の仕事に興味がない人
- 1年以内の一次試験に合格したい人
です。
一直線に中小企業診断士を目指す人には、簿記3級の取得、特にそのための「仕訳の練習」は無駄な勉強になります。
簿記3級のテキストを購入し、知識を身につけた上で、財務・会計に進むのが最短の道となります。
最後に
いかがでしょうか。
実は私は、「簿記検定の勉強は、中小企業診断士試験には必要ない派」でした。
もちろん簿記の知識は重要ということは理解していましたが、財務・会計のテキストで充分だと考えていたのです。
しかし、今回、簿記3級と財務・会計のテキストを改めて見直したところ、
- 自分自身が簿記検定の知識に相当助けられていたこと
- 財務・会計のテキストは、簿記の知識が前提となっており、初学者にはちょっと厳しいこと
- 逆に、簿記3級のテキストは丁寧なことが多く、財務・会計の入口として、とても適していること
を実感しました。
簿記の知識が無いというかたは、ぜひ、簿記3級のテキストから財務・会計の勉強を始めることを、強くお勧めいたします。
「簿記3級については分かった!では、2級は?」ですか?
簿記2級については以下で書いています。