こんにちは。中小企業診断士のまっころです。
今回は、試験合格後に行われる実務補習の流れについて、私の体験談も踏まえながら書いていきたいと思います。
ちなみに、私は実務補修は1回(5ポイント分)しか受けていません。
中小企業診断士になるには、15ポイントが必要ですが、残りの10ポイントは「実務従事」で稼ぎました。
私は、金融機関勤務でもなく、ましてやコンサルファーム勤務でもありませんが、実務従事ポイントを獲得は可能でした。
実務従事の方が楽なことも多く、一度検討してみることをお勧めします。
実務従事ポイントの獲得方法はこちら
【一般企業勤務でも可能】実務従事ポイントの獲得方法
実務補習とは
中小企業診断士の登録をするためには、「中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則」に基づき、試験合格後3年以内に、
- 実務従事
- 実務補習
を15日以上行わなければなりません。
どちらか一方ではなく、合計15日でOKです。
「実務補習」と認められるのは、
イ 経済産業大臣が第二十条第一項の規定に基づき登録する者(以下「登録実務補習機関」という。)が行う実務補習
ロ 基準省令第八条第三項の規定に基づく研修
ハ イ又はロに掲げる実務補習と同等以上の内容を有するものと認められる実務補習引用:中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則
とされています。
ややこしく書いてありますが、「実務補習」と言えば、ほとんどが「一般社団法人 中小企業診断協会が主催する実務補習」と考えて構いません。
一般社団法人 中小企業診断協会の実務補習のページはこちら
実務補習のスケジュール
実務補習は、
- 1社5日間コースと、
- 3社15日間コース
の2つがあります。どちらも一長一短。好みで決めれば良いです。
スケジュールは、2つのパターンがあります。
便宜上、パターン①②と名付けますが、
- パターン①:1日目がウィークデー、2~4日目が土日、5日目がウィークデーの場合と、
- パターン②:1~2日目がウィークデー、3~4日目が土日、5日目がウィークデーの場合
の2パターンです。
また、2日目と3日目の間は、1週間くらい空きます。
こんな感じです。
内容は、
- 事前準備
- 1日目:開校式、担当分け、企業訪問、経営者ヒアリング
- 2日目:企業訪問、経営者ヒアリング、ディスカッションなど
- 2日目~3日目の間:約1週間で各自資料作成
- 3日目:資料擦り合わせ、修正、ディスカッションなど
- 4日目:資料擦り合わせ、修正、ディスカッション、提案資料印刷・製本
- 5日目:企業訪問、プレゼンテーション、提言資料提出
という感じで進んでいきます。
では細かく書いていきたいと思います。
事前準備
テキスト
一般社団法人中小企業診断協会から、テキスト一式が封筒に入って送られてきます。
封筒の中には、
- 実務補習受講申込完了通知書
- 中小企業診断士 受講心得
- 実務補習テキスト
- McSS 中小企業経営診断システム スタートアップガイド
が入っています。
一応「テキストは事前に読み込むように」と書いてありますが、ざっと目を通しておけば良いと思います。
ただし、
- 実務補習受講申込完了通知書
- 中小企業診断士 受講心得
は、初日の集合場所や必要な持ち物、注意事項などが書かれていますので、しっかりと読んでおいたほうが良いです。
指導員から連絡
指導員となる中小企業診断士の先生から、メールで連絡が来ます。
実施日の4~5日前くらいに送られてくることが多いようです。
私の時は、
- 指導員となることの挨拶
- 実務補習先の企業情報
- 各種資料
などが送られてきました。
恐らく、大体こんな感じでしょう。
この中で重要なのは「実務補習先の企業情報」です。
その企業のウェブサイトを確認し、
- 業種
- 取り扱い商品
- 規模(社員数など)
- 沿革
などを、しっかりと確認することをお勧めします。
初日は、いきなり企業訪問・ヒアリングとなる可能性が高いです。
そこで、「何をしている会社だっけ?」とならないよう、隅々までチェックしておくことをお勧めします。
ただし、指導員の先生によって、やり方が異なります。
訪問先の企業情報や資料は送られてこないことがあるかもしれません。
事前に課題が出されることもあるそうです。
指導員の先生の指示に従って、準備を進めてください。
持ち物の準備
持ち物の準備で注意すべき点は1点だけです。
それは「ノートパソコンを用意すること」です。
持っていない人にとっては大きな出費となりますが、買ってしまいましょう。
これが無いと何ともなりません。
スペックは高くなくて構いませんが、
- 無線LAN対応であること
- 対応でなければ別途、無線LANアダプタを用意すること
- 外でインターネットにつなぐ手段を用意すること
- モバイルWi-Fiルーターを用意するか、スマホのテザリングでもOK
- MicroSoft Officeが入っていた方が良い
- Wordは必須
- ExcelやPowerPointも使うかもしれない
といった準備が必要になります。
ノートパソコンの準備ができればほぼ完了。後は、
- 筆記用具・ノート
- 名刺があれば名刺
- 訪問先企業では使いませんが、受講生同士の自己紹介で使うことがあると思います。
- 普段使っているものが無ければ、作ってまで用意することはありません。
- わざわざ実務補修用に作ったら逆に変です(笑)
- 中小企業診断協会から送られてきたテキスト一式
あたりをカバンに詰め込めばOKです。
1日目
開校式
さて、緊張の1日目。まずは開校式です。
これはただの儀式なので特に気にすることはありません。
ここで、一緒に実務補習に取り組む仲間との顔合わせがあります。
名刺交換をするなど、交流をするといいかもしれません。
ちなみに、先ほども書きましたが、訪問先企業では名刺を出すことはありません。
「出さなくていい」ではなく「出したらダメ」です。
あくまで「受講生の○○」という立場での訪問となります。
担当分け
メンバーは多くても6人くらいだと思いますので、以下のような担当分けになると思います。
- リーダー(経営戦略・全体戦略担当)
- 財務担当
- 営業・マーケティング担当
- 生産担当
- 人事担当
- 情報システム担当
一番大変なのは、恐らくリーダー(経営戦略・全体戦略担当)でしょう。
経営戦略・全体戦略を描くことも大変ではありますが、それ以外にも、
- ディスカッションの仕切り
- メンバーの意見の取りまとめ
- 訪問先企業でのヒアリング時に、最初に喋らされる(と思われる)
など、大変なことが盛りだくさんです。
「大変だけど、とても良い経験になるので、一度はやった方が良い」と噂のリーダー役ですが、私は結局やりませんでした。
私は「リーダーの次に大変」と噂の財務担当になりました。
財務担当をどれだけ大変と感じるかは人それぞれだと思いますが、不安に感じることはありません。
これから実務補習に挑むあなたも一次試験・二次試験に合格した方です。
問題無いと思います。
企業訪問・ヒアリング
さあ、企業を訪問し、ヒアリングです。
指導員の先生によってやり方は異なると思いますが、初日は木曜日か金曜日であることがほどんどで、基本的に土日は企業訪問は行えません。
そう考えると、「初日に企業訪問がある」と思っておいた方が良いと思います。
初日は、午前中に開校式などの行事があり、実際に動けるのは午後からになります。
よって、社長へのヒアリングはせいぜい2時間程度。
2時間で重要な情報を聞き出すのはとても大変で、準備はした方が良いです。
というか、貴重な時間をいただくのですから、事前準備は必須ですね。
事前準備と言っても難しいことではなく、
- 企業のウェブサイトをチェックし、
- その企業の課題を自分なりに想像し、
- ある程度の仮説を立てておく
くらいで良いと思います。
先方も貴重な時間を割いてくれているとはいえ、こちらが診断士の卵ということも充分把握されています。
真摯に取り組めば問題ないでしょう。
2日目
再び企業訪問・ヒアリング?
私が受けた実務補習では、2日目は朝イチで企業を訪問し、夕方までずっとヒアリングでした。
先方も社長のみならず、側近の経営陣の方も代わる代わる付き合っていただいて、本当にありがたかったです。
1人あたり30分~1時間程度いただいて、自分の担当分野について、徹底的にヒアリングさせていただくことができました。
私が受けた実務補修はパターン②だったため、そのようなスケジュールが可能だったと思います。
ただ、他のグループの話を聞くと、2日目が金曜日の場合でも、「2日目は部屋にこもって1日中ディスカッション」というパターンもあるようです。
というか、その方が多いのかもしれません。
となると、ヒアリングは初日の午後の2時間程度だけということになりますね。
「そんな短時間で色々聞き出せるの!?」と思いましたが、 やはり全然聞き出せないそうです。
そりゃそうだ・・・。
私のチームは恵まれていたと思いましたが、その分、
- SWOT分析
- 経営課題抽出
などの、 「いわゆる実務補修」みたいなことはやりませんでしたので、「どっちもどっちかなぁ」と思います。
もちろん、内部環境・外部環境や経営課題について、たくさん話し合いましたよ。
「さあ、SWOT分析やろう」「次は経営課題抽出だ!」と定型的にやらなかったというだけです。
2日目~3日目の間
2日目~3日目の間は、1週間ほど空きます。
ここである程度、資料を作っておかないと、後々大変です。
実務補修で辛いと言われる期間ですね。
1人で作業することになりますので、特に初回は大変かもしれません。
私は財務担当でしたのでまあまあ大変でしたが、本業での経験を活かすことができ、「それなりに良い資料が作れたかな」と思っています。
毎日、本業の仕事が終わってからの作業になりますので、大変でしたけどね。
3日目
議論→資料作成→議論→資料作成→議論・・・
3日目は土曜日のことが多いです。
指導員の先生やメンバーと再会します。この日は1日中缶詰めになります。
- それぞれ資料作成がどこまで進んだか共有し、
- 方向性を議論し、
- 各自資料を修正し、
- その状況をまた共有し、
- 方向性を議論し、
- またまた各自資料を修正し・・・
という繰り返しが続きます。
私のチームでは、ヒアリングもたっぷり出来ていたこともあり、具体的にな議論ができて、本当に楽しかったです。
- 「社長はああ言ってたけど、この問題は認識されてないんじゃないかな」
- 「こういう解決策があるけど、社長は実行してくれるかな」
- 「社長の側近のあの人の意見は、社長とも共有した方がいいんじゃないかな」
- 「伝え方が難しいよね。どうしよう」
- 「財務のところでこの数字を示すから、それに基づいた営業手法を提案しない?」
- 「どうしよう!この施策を実行しようにもお金がない!」
みな、同じくらいの年代で、同じ試験を突破してきた仲間なので、ベースができてるんですよね。
また、メンバーに生産やシステムなど「その道のプロ」もいて、もの凄く勉強になりました。
4日目
4日目は日曜日のことが多いです。
引き続き缶詰めです。
診断報告書とプレゼン資料
そういえば、プレゼン用の資料って、何で作りますか?
多くの人はPowerPointをイメージするのではないでしょうか?
しかし、診断協会に提出する「診断報告書」はWordで作る必要があります。
これは、実務補修ポイントを獲得するためにも、必ず作成しなければならないものです。
また、PowerPointで作った資料は「資料+しゃべり」で完成するように作ることが多く、「後から資料だけ見ても分かりづらい」という欠点もあります。
要するに、「診断企業先に置いてくる資料」としては、文章をしっかり書きこんだWordの方が適しているということです。
でもWordでプレゼンはやりづらい。
どうしよう・・・。
どうしますか?
私のチームでは・・・、両方作りました。
プレゼンではPowerPointをプロジェクターで映しながらしゃべり、Wordの診断報告書を置いてきました。
内容は同じなのですが、レイアウトや文章がちょっとずつ異なります。
2つ作るのは結構大変でした。
議論→資料作成→・・・→印刷・製本
さて、この日は「診断報告書の印刷・製本」が終わらないと帰れません。
途中までは余裕をもって印刷・製本に取り掛かれそうでしたが、やはり最後はバタバタでした。
徹夜にならなかっただけマシかな。
実務補修受講記録
あ、そうそう。
そういえばこの辺りで、診断協会に提出する「実務補修受講記録」を作らなければなりません。
どういうものかというと・・・えーと・・・忘れました・・・。
たしか、A4用紙1枚ペラの、簡単な書類だったと思います。
フォーマットもありました。
リーダーが作らされてましたが、30分くらいで終わっていたと思います。
というか、この時期は皆必死で、作成をリーダーに押し付けて自分の担当するところを頑張って仕上げてた気がします。
リーダー、あの時はゴメン。リーダーはやっぱり大変です。
5日目
プレゼンテーション
さあ、朝から最終確認とリハーサルをして、いよいよプレゼンです。
必死にプレゼンするメンバー・・・。
じっと聞く社長・・・。
つたない提案だったと思いますが、しっかり受け止めて、お礼を言っていただけました。
良かった・・・。
プレゼン終了後は診断協会へ戻り、修了証書をもらい、終了となりました。
長かったような、短かったような。
多分この会社のことは、ずっと忘れないと思います。
最後に
実務補修に行くまでは、本当にドキドキでした。
特に私は独学で勉強してきましたので、他の受験生と関わることがほとんどありませんでした。
「自分より優秀な人ばかりで、ついていけなかったらどうしよう・・・」
でも、実際に参加してみると、そんな心配は杞憂に終わりました。
(周りが優秀な人ばかりというのは当たりました。高学歴&大手企業率、高ぇ・・・。)
皆、同じ試験を潜り抜けてきた仲間です。
そして、あなたも同じ試験を潜り抜けた一人です。
心配することはありません。
中小企業診断士はもう目の前です。
最高の実務補修になるよう、最後のもうひと頑張りです。